宇宙飛行士になる条件と選抜試験で問われること

リード文

宇宙飛行士は「特別な才能を持つ限られた人だけの職業」というイメージが強いですが、実際の選抜基準は時代とともに変化してきました。かつては年齢や身長、学歴に細かい制限がありましたが、近年は応募条件が大きく緩和されています。この記事では、JAXAの宇宙飛行士選抜を中心に、応募条件の変遷と試験で実際に問われる内容を整理します。

応募条件はどう変わったか

JAXAが2021年度に13年ぶりに実施した宇宙飛行士候補者募集では、応募条件が大きく見直されました。変更の中心は次の2点です。

  • 学歴不問になった。 それまでの「4年制大学(自然科学系)卒業以上」という条件を外し、学歴および専門分野を応募条件とせず、必要な能力は選抜試験で評価する方式に改めました。文系にも門戸が開かれたことになり、世界初の「学歴不問」の宇宙飛行士募集として報じられています
  • 年齢制限がなくなった

背景には、200件を超えるパブリックコメントで条件緩和を求める意見が多く寄せられたことがあったとされています。月周辺の有人探査計画「アルテミス計画」を見据え、多様なバックグラウンドの人材を確保する狙いです。

では、何が条件として残っているのか

「学歴不問」は「無条件」ではありません。2021年度の募集要項では、次のような要件が挙げられています。

項目 条件
実務経験 2022年3月末時点で3年以上(修士号取得者は1年、博士号取得者は3年の実務経験とみなす)
身長 149.5〜190.5cm
視力 遠距離視力が両眼とも矯正視力1.0以上(矯正可)
色覚 正常(石原式)
聴力 正常(背後2mの距離で普通の会話が可能)

視力が「矯正可」である点は、諦めていた人にとって効く条件かもしれません。身長の基準も過去より緩和されています。

条件緩和の効果は数字にも出ました。応募総数は4,127名で過去最高。前回(963名)の約4.3倍です。内訳は男性3,204名(77.6%)、女性919名(22.3%)でした。

選抜試験で問われる能力

書類選抜を通過した候補者には、英語力や基礎的な学術知識を確認する試験、そして詳細な医学検査が行われます。医学検査では視力や聴力、心肺機能といった一般的な健康状態に加え、宇宙という特殊環境に耐えられるかどうかを見るための項目が含まれます。

また、心理適性検査や個別・グループでの面接も重要な選抜プロセスです。単に優秀であることよりも、長期間にわたり限られた空間で他者と協力し続けられる資質、ストレス下での判断力、コミュニケーション能力などが重視される傾向にあります。宇宙飛行士に求められるのは「知識や技術」だけでなく「人としての適応力」だという点は、選抜のどの段階でも共通して意識されているポイントです。

最終試験のハイライト・閉鎖環境試験

選抜の最終段階では、候補者が実際に共同生活を送りながら課題に取り組む「閉鎖環境試験」が実施されます。数日から1週間程度、外部との接触を制限された環境で共同作業やチームでの課題解決を行い、そのなかでの言動や協調性が評価される仕組みです。

この試験では、体力や知識の優劣よりも「限られた資源とストレスの中でどう振る舞うか」が観察されます。国際宇宙ステーション(ISS)のような閉鎖空間での長期滞在を想定した実践的な選抜方法といえるでしょう。試験官だけでなく、同じグループで過ごした候補者同士の評価が選抜に影響するとも言われており、単独では測れない資質を見極める工夫がなされています。

そして2023年2月28日、4,127名の応募から諏訪理(すわ まこと)さんと米田あゆ(よねだ あゆ)さんの2名が宇宙飛行士候補者として決定しました。倍率にすると約2,000倍です。

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まとめ

宇宙飛行士の選抜条件は、年齢・学歴などの制限が緩和され、より多様な人材を受け入れる方向へ変化しています。試験では医学検査や語学力だけでなく、心理適性やチームでの協調性など、閉鎖環境での実践的な適応力が重視されます。制度は今後も見直される可能性があるため、最新の募集要項は必ずJAXAの公式情報で確認することをおすすめします。

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